ソーの構造

 

 キチンと構造を見直してみようというので、新品の刃の写真から図を起こしてみました。
撮影の角度や拡大率は微妙に違うのですが、そこそこ比較できると思います。
 すると意外な事に、上刃とカッティングポイントまではどの形式の刃もほぼ同じでした。
違うのは横刃の断面でこちらの方が切れ味に影響を与えているのではないでしょうか?


 ※ 最終的には、この内容も見直しが必要となりました。
 (2012.1.25)

2011.1.19
刃を真上から撮った写真からトレースして、右の図を描きました。 ドライブリンクの方向の腺をほぼ合わせ、カッティングポイントを重ねてみました。
 すると予想に反して、上刃はほぼ揃うのに対し、横刃の形状の違いが際立ってしまいました。
 上刃とカッティングポイントの作り方はどの形状の刃もほぼ同じですから、横刃の作り方が切れ味に影響すると考えていくのが妥当そうです。
 特に、矢印の範囲が問題なんだと思います。

 ※ 下記に書きましたが、どうもここではなさそうでした

 ※ ここの形状が、横刃目立て角に影響を与えているようです。(2012.1.25)



 正面からの写真を元に、図を起こしてみました。
写真の状態が良くなかったのと、重ね合わせるために画像を適当に縮小したりして、精度は良くないのですが、傾向は判ると思います。

 (右の直線は、デプスゲージから引いた垂線ですので、実際は上刃もそれぞれ傾いています。)
2011.1.24
上面とカッティングポイントを合わせる 上面と軸を合わせる
 73LPX以外は、ほぼ似た傾向のようですが?

a,bの各接線までが切削に関係する部分です。
きっちり重ねると、微妙な点しか違いません。

 裏側の曲がりの違いは、プレスの金型設計の考え方の要素が大きいと思います。

 LPXを除いては、形状的な違いで切れ味が違うと言うより、目立ての仕方による違いの方が大きくなっているような感じです。

 Rの曲線が綺麗に出来上がっている方が、木口の切り口もきれいで切削能力が高いような気がしますが...?
 軸を合わせると、結構ズレが出ます。
 上刃の状態はほぼ同じですが、切れ味に差が出ます。
軸が傾いているので、25APは右上がりの刃なのかな?
 今度確認してみます。
 軸を合わせると、上刃の位置がかなりずれます。
この辺の差が、切れ味の差になるのでしょうか?
 VXとVXLは結構差がありました。  使ってみた感じでは、VXよりVXLの方が切れる感じでした。
VXLを使うと木口が綺麗だというのは、ワーキングコーナーのカーブのせいなのでしょうか?
 意外な事に、外側の曲線はよく似ていました。
でも、21BPの方の切れ味が悪いのは、外側の膨らみのせいなのでしょうか?
 91VXが、角張っているような気がしましたが、トレースしてみるとそれ程違いはありませんでした。
 意外な感じです。
 何か傾向がつかめるかと思ったのですが、明確な回答は見いだせていません。
 ワーキングコーナーの下側の膨らみが重要な役割を果たしていそうな気はしますが、現状では様々な推測をするにとどまります。

 今後、正面からの正確な画像も必要でしょうし、横から撮影した画像も必要です。
 なかなか一筋縄ではいかない相手です。



切れなくなった刃

 切れるという事を知るためには、切れないと言う事をきちんと知っておこうと思い、切れなくなってきた刃の写真を撮ってみました。
 結構、刃先が欠けてしまうものなんですね。
 刃先の白く光って見える部分が、欠けてしまった部分です。
刃は、91VXLで、目立ては上刃とワーキングコーナ−をグーフィーで、横刃を3.2mmの丸ヤスリで磨いでいます。
 
1月27日
 理屈上は機能しないはずの、横刃の下の方まで、欠けてしまっています。
 刃が、横ブレしながら動いているからだと思います。

 この刃は、グーフィーで磨いでもカッティングポイントがうまく作れませんでした。(丸くなっています。)
 この刃も、刃先全体が細かく欠けてしまっています。

 カッティングポイントはうまくできている刃です。
 上刃もかなりボロボロです。  何か堅い物に当たったらしく、かなりひどく刃が飛ばされています。



目立てについての仮説

 目立てについては様々な考え方がありはっきりしませんが、以下のように考えていくとつじつまが合いそうです。
 
この仮説で実際に刃を作っていってどう変わるかを見たいと思います。
1月29日
 様々な種類の刃の断面を比べても、はっきりしません。
ゆるいRの刃の方が切れる感じがするのは、赤矢印の部分が一番先にくい込むので
(「グラインダーでの目立て」の「石を切った刃」を参照)、初期の切削量が多いのかもしれません。
 また、Rが大きいと横刃が段階的に切削していくので 木口の断面がきれいになるのかもしれません。

 
 どうも、カッティングポイントの位置が問題のようで、上図の赤丸の位置(Rの開始位置)にカッティングポイントが出来るようにするのが一番のポイントではないでしょうか。

 ※ 結局、この付近の上刃切削角が53度になっている事が一番のポイントでした。
 これは切れない刃ですが、矢印の位置にカッティングポイントが出来るよう線の部分を削っていけば切れる刃が作れます。
 新品の刃の切れが悪いのは、カッティングポイントがほんの僅かずれているためだと思われます。
 赤線のように研ぎ上げると切れが良くなると考えられます。


 丸ヤスリで研ぐと この位置を出すのは難しいのですが、平ヤスリだとほぼ確実に一番上にカッティングポイントが出来ます。これがグーフィーなどの平ヤスリで研ぐと切れ味が良くなる理由ではないでしょうか?
 丸ヤスリで研いでも平ヤスリで研いでも、刃先の角度は同じですが、丸ヤスリの方がほんの僅か刃の肉厚が厚くなります。
 切れなくなった刃先を見るとかなり潰されたり欠けたりしているので、この厚みの差とカッティングポイントの角度が鈍角になるのとで 刃の持ちが違ってくるのかもしれません。

 
 上図の黄色い部分を平ヤスリで55度前後(かなりいいかげんでも良さそうですので、作業に合わせて鋭角にしたり鈍角にしたり調整できます。)に研げば、切れるようになります。

 また、丸ヤスリを10度下げて研いだ場合、カッティングポイント側が55度ですが、反対側はかなり鋭角になるし、上刃の角度も30度ではなくもっと鈍角になります。出荷段階では同じ角度で削ってあるので、そういう角度設定が必要かどうかは今後の課題です。

 横刃は、刃の振動や木口の綺麗さに問題が無ければ、フックだろうとバックスロープだろうと問題はなさそうです。
これは、丸ヤスリで研ぐ場合は上刃を作るために必要な事だったのでしょうが、上刃を平ヤスリで研ぐ場合には横刃にももっと機能的な角度や形があるかもしれません。



そろそろ結論

 さんざん苦労した目立てですが、そろそろ結論が見えました
解ってしまうと なんだこんな事かと言う気もしますが、以外とそんなものなのかもしれません。(笑)

 結局 第3のポイントは、曲げのある方(ワーキングコーナ−側)から見て上刃の角度が48度(一般的な言い方だと60度とか55度)に研ぐことだけです。
今までの指導法だと逆方向から研いでいたので ヤスリも逃げるし(だから、力を入れずに なでるように研ぐ。)、視点もその方向からだったので ここの角度を見るのが非常に難しかったのだと思います。
 普通の研ぎと逆の方向から見た状態で研げば、一発で切れるようになると思います。(切れなくなった刃が手元に無いので、私はまだ試していませんが...。)

基本は今までの教え方の逆方向から見ながら、カッティングポイントの部分で ヤスリの頭を1/5出して研ぐ事です。

 結局、チェーンソーの刃はノミと同じなので、横から見て一番先に食いつく部分が尖っていなければいけないという単純な話でした。(木を切っている時は、ワーキングコーナ−側の上刃が 刺さって すくい上げているようなイメージです。)
しかも、今までと逆から見て研げば一番重要なワーキングコーナーがきちんと研げるという事ですから、余程でなければ失敗する事は無いと思います。
これが基本的な目立てなので、それ以上切れる刃を追求する時に 横刃の話とか刃の後ろを落とした方が良いとか細かい話が出てくると思います。

 そして、LPXなどの角刃が切れるというのはノミの機能に徹した構造だからだと思います。
2011/02/03
 一般的な目立て指導の写真とは逆方向から見るのが正しくて、 上刃を横前方30度から見て、aが48度(上刃切削角としては、53度。)になるように研げば良い。  特に、cの部分の上刃切削角がきちんと53度になっていないといけない。
 左右の刃の長さが揃っているのに 曲がって切れていくのは、左右の刃の切削角が違っている場合が多く、cの部分の上刃を左右そろえるように削り直すと、真っ直ぐ切れるようになる。

 bも鋭角の方が切れるけど、それはあとの話です。

 25APの切れる状態ですが、カッティングポイントが曲線になっているので、切れるかどうか見ただけでは良く判らない。  真上から見ても解らないが、指でなでると引っ掛かりがあり、きちんと研げているのが判る。  真横斜め前方から見ると、一番上が尖っているのが判る。これを判断の目安にすると良い。
 斜め後方からだと、もっと微妙な違いがわかる。
 91VXLは幾分判りやすいが、それでも尖っているようには見えない。  真上から見ても、角が有るな?程度の感じです。  横から見れば、尖っているのが判ります。



目立てヤスリ各種

 チェーンソー用の目立てヤスリの断面を比較してみました。
 各ヤスリは、平らで長い面が上刃を研磨し、短い面が横刃の研磨に使います。
どのヤスリを使っても上刃の切れは良くなるのですが、横刃に凹みが出来るのが問題です。どちらにしても、丸ヤスリを使うより切れ味が良くなるので、お勧めです。
 極端な話、デプスを削る平ヤスリでもオーケーです。(笑)
 目立てのツボは、その辺にありました。
 グーフィー  ダブルベベル
 製材ヤスリ
 昔からの国産ヤスリ。製造メーカーにもよりますが、グーフィーより角が出なくて使いやすそうです。
 3コーナー



目立てのポイントと可能性

 今まで知り得た事から、目立てのポイントと、目立を変えていける可能性について考えてみました。
変更の可能性については 現時点での予測なので、今後様々な試行錯誤を繰り返していくとはっきりしてくると思います。

 そうすると、作業をする人がそれぞれの作業内容や機械の性能と好みで自分の刃の形を作っていけるのではないでしょうか。
                      (写真の刃は25APの同一の刃を様々な角度から撮影したものです。)
2月11日
 赤丸部分が刃の先端まできちっと研げていて、上刃切削角が55度になっていれば刃は切れます!
           (ここが一番のポイントです。)

 上刃切削角の角度は、55±10度の範囲内で選択できそうです。
 上刃を丸ヤスリで10度下げて研ぐと、aは55度でも bは刃の種類によっては40度以下の場合もあるし、ヤスリが潜るので目立て角度も鈍角になる。
 逆に言うと、b側の上刃切削角の角度は かなりいいかげんでも良い事になる。

 ヤスリを上刃の傾きと平行にして削るのが基本だと思います。
 あとは、バーの長さ、排気量、材の堅さなどによって、切れ具合を見ながら下げ角度(上げるのも 有りかな?)を模索すれば良いと思います。

 
 矢印部分は、上刃と平行にきちんと研げれば、丸ヤスリでも角(平)ヤスリでもほぼ同じような切削角に仕上がります。(つまり、切れ味もほぼ同じ。)
 横刃目立て角は、30±10度位(あるいはそれ以上?)から選択できそうです。
力の無いエンジンの時は鈍角にするとか、鋭角にするとカッティングポイントが広がるので、刃の持ちを良くする とかの調整はできそうです。
 b (実際は上のRの部分ですが。)は、35度とかの鈍角の方が木口がきれいに仕上がります。

 
 aは、とがる必要はないが、食い込みを良くしたいなら できるだけ角の方が良い。(カッティングポイントを広くすると 逆に丸くなる。)

 bは、できるだけ直線に近い感じに仕上がる方が良い。
ただし、a、bは 刃の形式によって異なるので、自分の使う刃の状態を知っておく事が必要です。
 上の「切れない刃」の写真で比較してもらえばイメージできると思います。

 cは、真っ直ぐだと抵抗になるので裾野を削って赤線のように緩いカーブを作ると良い。(教科書的には、85度と言う言い方をしています。)


inserted by FC2 system