チェーンソーの目立て

 

 チェーンソーの目立てには常に苦労させられました。(刈り払い機に比べれば、これほど面倒な道具もありません。)
同じ形式の刃ではそこそこ切れるようには出来ても、刃の形式がかわるとうまく研げなかったりします。

 様々な資料やHPを見ても、30度の角度とヤスリの頭を1/5出す。以上の事はほとんど書いていませんでした。
出来杉計画」さんのブログや、「省吾の自慰的ブログ」さんの講習会のレポートにかなり詳しい事が書いてあり色々と勉強させて頂きましたが、どういう状態だと良いのかいまいち完全に理解するところまではたどり着けませんでした。


 でもある時、刃先を虫眼鏡で見ていると、切れる状態の刃の上刃には尖った部分のある事に気がつきました。
ここが尖っていると、木に刃が突き刺さっていく感じで食い込むため良く切れるのだろうと思います。
 刃が木に最初に接触する部分が尖っていれば、刃がスムーズに木にくい込むというのは当然でしょう。
最初に木と接触する部分を鋭利にしておく事が第一で、刃の角度は二の次ではないでしょうか?

 以下のように研いでいくと切れ味の良い刃が作れると思います。

 ただ、オレゴンの91やLPXのように曲がりの部分(下図の緑の部分)に角の有る刃の場合は、尖った先端を作りやすいのですが、25APとかBPの刃は丸いので、丸みのある先端になってしまいます。そこで、ヤスリの手元を10度下げるというのは、3番目の図のような状態で研がせるためだと思います。
   ダブルベベルやグーフィーと言った平ヤスリは、このくちばし部分をうまく作れるので、切れが良くなるのではないかと思っています。
また、LPXのように一点でくい込むタイプは切れ味は良いのですが、土などで先端を削られると極端に切れ味が落ちるようです。
 石を切った時のように、一瞬にして切れ味が落ちるのは、この切っ先部分がつぶれてしまうためだと思います。
切れ味を取るか、耐久性を取るかの選択もここにあります。(2010.06.23)



 と言う事で始まった目立ての泥沼でしたが、一応の結論を見ましたので下のボタンをクリックしてその結末をご覧下さい。(2012.0417)


                








 丸ヤスリによる目立て 
 まず、横歯を磨ぐ。(赤い線の部分)
この時、刃の曲がりの部分(緑の部分)を、上刃の先よりできるだけ奥(図だと右方向)に食い込ませ、上刃に角が出来るように研ぐのが一番のポイントです。
 そうすると、横歯角度が85度位になるのでしょう。(これを、「富士の裾野を落とす」と言う表現をしていたのではないかと思います。)
 次に、上刃を研ぐ。
これは、普通に1/5ヤスリの頭を出して研ぐ。
 最後に、ヤスリの手元を下げ、上刃の角を尖らせるつもりで、1〜2回研ぐ。  うまく研げると上刃に尖った先端が出来ます(赤丸印)。ここが一番先に木にくい込むので切れが良くなる。

 確かに、チェーンソーの刃をノミとかカンナの刃に例えますが、平らなだけの刃はくい込む力が弱いので、角を作ってくい込みやすくする事が必要なんだと思います。
 ※ 以上のような予測から始まった目立てですが、結局はこういうことではなく、横刃に対する横刃目立て角が問題でした。
   ワーキングコーナー部分の、丸ヤスリの頭の出方は 1/5〜1/2 の範囲で調整してみる必要がありそうです。
2012.1.25



<刃先の写真>

それぞれの刃を指定の丸ヤスリで磨いだ状態
91VX 25AP 20BP 73LPX
 角が完全に尖っています。
矢印の上の部分は、丸ヤスリのカーブが出ています。
 角が出ているので、一応切れる方の刃です。  20BPとしては、良く切れる状態の刃です。  新品の状態ですが、いかにも食い込みそうです。
 ヤスリがちょっと上過ぎましたが、尖っているので良く切れます。  どう研いでも、角は出にくい。
この状態では、食い込みが悪く切れない刃です。
 一応切れる状態の刃ですが、それでも食い込みが悪いと感じます。
横歯の部分をもう少し右に食い込ませると良いのかもしれません。
 ヤスリの位置が悪くても、食い込み部分が出来るので良く切れます。


<25APをグーフィーで研いでみる>

 切れない刃
尖った部分が無く、食い込んでいきません。
 下(ドライブリンク側)の部分を削り込んでいくと、突起が出来て食い込みが良くなります。
グーフィーで砥いだ後。横歯の部分が凹んで、上刃にとがった部分が出来ています。
この後、丸ヤスリで横歯を磨いだら、食い込みが良くなりました。


     


<理屈は判ったけど、色々と気になるので、25APより刃の大きな20BPで色々と研いでみる事にしました。>


 仕様は、「規定の4.8mmの丸ヤスリのみ」、それと丸ヤスリで削った後に「3.2mmの丸ヤスリでコーナーを削ったもの」、「グーフィーでコーナーを削ったもの」、「ダブブベベルでコーナーを削ったもの」を作ってみました。

 結局、指定どおりに削っておいて(特に、上刃の前に横歯の下の方の削りをきちんとしておいて...)3.2mmのヤスリで斜め下から角を作るのが良いようです。
 指定のヤスリだけでも、研ぐポイントが判ればそこそこ切れるのでその程度で使用するか、ヤスリ以上に刃の形状が問題なので、LPXのような形状の刃に交換したり、オレゴンではなくスチールの刃に(値段は高いけど、堅くて良く切れるという話も聞いています。)交換したりする方が近道かもしれません。

 結局、チェーンソーの刃が切れるとか切れないとかは、刃の角度以上に一番先に木に食い込む切っ先をうまくつくれるかどうかが問題で、刃の角度は二の次だと思います。
 そこをクリアすすると、本当に刃の角度を選択するようになると思います。(結構大変そうだけど。苦笑)
 メーカーの話もいい加減なので(研ぐ事や切れる刃の論理的な説明はほとんどしていません。)、本来は、「切れる」と言う事をきちんと解説して欲しいと思います。


 ...長かった、チェーンソーとの戦いも、これで終わりになる事を願っています...(苦笑)
 
4.8mm丸ヤスリ 4.8+3.2mm丸ヤスリ 4.8+グーフィー 4.8+ダブルベベル
 突起は出来るけれど、丸い感じです。
仕上げに角の部分を下から斜めに削ると、もう少し鋭角になります。
 グーフィーの板厚が3.0mmだったので、角の部分を3.2mmの丸ヤスリで削ってみました。
 位置が良かったのか、きれいに角が出来ました。(ピンぼけですみません。)
 丸ヤスリより鋭角になります。
もう少し位置を変えるともっと鋭角になるはずですが...。
 こちらもかなり鋭角です。
   角を落とした分、若干へこみが見られる。(グーフィーと同じかな?)  かなりへこみが大きくなっています。
ヤスリをもう少し上へ上げた方が良かったようなので(角度もあるかな?)、使い方によって変わると思います。
 グーフィーほどではありませんがへこみます。
 円を角で落とすのだからへこみが少ないのは当たり前ですが。
 こちら側からだと、へこみはほとんど判らない。  こちら側からもへこみが判る。
 これも幾分へこみます。



CADで描いたソーチェーンの刃
 どうしても理想の刃型が判らなかった時に、設計用のCADで図面を引いてみました。
横から見る時の参考にして下さい。
 ヤスリを1/5出した状態で刃先のところに接線を引いてみると、何度書き直しても刃先角度は53度前後になります。
計算上もこの位の数値になるようなので、理想状態だと、この角度になるのでしょう。
 左の図から、実際の刃のイメージにしてみました。  横歯目立て角を85度にしたかったのですが、83度で妥協する事にしました。(笑)
 刃先部分は、53度だとこんなイメージになります。



 出来杉さんが、91VXLは91VXと形が違うというので気になり、買ってあった刃の写真を撮ってみました。
ついでに他の刃も正面からの写真を撮ってみました。(20BPだけは新品がなかったので、チェーンソーに付けたまま撮りました。 刃の前のぼやけたものは、デプスゲージです。)
 すると、91VXLは25APに似た曲がりになっていたので、10度下げないとカッティングポイントが出来にくくなったのだと思います。

...写真を見ながら色んな事を推測してみるのですが、刃が切れるという事は刃の角度以前にどんなカッティングポイントが出来るかが問題で、それは刃の形式で決まってしまうようです。
 新品の刃を見ても、25APと73LPXは確かに下げて研いでいますが(下げ角が微妙に違うようだけど?)、91VXLはほとんど水平に研いだ状態で出荷しています。
 でも、73LPXを10度下げるのは意味が良く判らないんですが...? 今使っている刃はまだ研いではいないので、今度水平に研いでみようと思います。
 25APでは、出荷段階で個々の上刃の長さが1.2mmまで違っても出荷規格の範囲内なのだそうですし、カシメているリベットの潰した厚みもばらばらでしたので、オレゴンの刃は結構アバウトな部品だと思った方が良いようです。(スチールやウィンザーの刃は見た事がないので解りません。)

 どうも刃を研ぐという事は、上刃と横歯そしてワーキングコーナー(特に、カッティングポイント)を別々に考えた方が良さそうですね。
 最近私は、横歯を35度で研いでいます。(90-35=55度 なので...)

 研ぎを簡単に済ませたいという人は、出来杉さんのようにカッティングポイントを意識して研げば十分だと思います。
また、どうしても切れ味にこだわる人は、上刃はグーフィーで研いで、ワーキングコーナーを1〜2mmの丸ヤスリで斜めに研ぎ、横歯は規定のヤスリでそれなりの角度に研ぐと切れ味が良くなるのではないかと思っています。 (写真を見ての推測ですので、結果は違うかもしれません。)


91VX 91VXL
   
25AP 20BP
   
73LPX



メーカーの目立て
 色々悩むより、まずは出荷段階の刃の状態を見てみる事にしました。
この状態が一番良いという事ではありませんが、一つの基本の形だと思います。
<25AP>
 たぶんこんな形状のグラインダーで研いでいると思われます。
 どのタイプの刃もワーキングコーナーの下の位置(切削に直接関係する部分。)までヤスリの直線部で削っていました。

 丸ヤスリではなく、最初からこういう形のヤスリが有れば、色んな人が悩まなくても良かったかも。
 でも、そんなヤスリを作る方が難しいからあきらめたんでしょうね。

<追記>
 オレゴンでは、厚み3.2mmのグラインダーで研いでいるようです。
<25AP>
 写真では曲がって見えますが、ここ(緑矢印)までヤスリの直線部分で研いでいました。
 黄色の矢印は、プレスで抜いた後グラインダーで削るので残る突起部分。最初に刃を研ぐ時にこの部分を削らないと、丸ヤスリは刃に密着しません。
 また、ここに4mmのヤスリを当ててみましたが直線部分以外もRが一致しませんでした。最初は、4.2とか4.3mmのヤスリだと一致しそうですが、それ自体は特に問題にはならなそうです。
<25AP>
 グーフィーを当ててみました。
グーフィーの角は、グラインダーと比較すると角ばっているので、横歯に凹みが出来ます。
 それなら上刃は、デプスを削る平ヤスリで研いでも同じ結果になります。
 上刃(ワーキングコーナの下まで)は平ヤスリで、横歯は丸ヤスリ、と言うのが出荷時の刃の形状に一番近く仕上げられると思います。


 
ただ逆に言うなら、出来た凹み部分より下は切削にあまり関与しない部分なので、削らなくても良いような気もします。(実際は、刃も振動しているので、何らかの影響はあるかもしれませんが。)
<25AP>
 25APの横歯には突起が有りました。(白矢印)
25APの曲げではどうしても避けられないようです。
<91VX>
 91VXには25APのような突起は出来ませんが、グラインダーの削る位置が浅いので、プレスとの境の突起が横歯に出来ています。
<73LPX>
 どの形式の刃も、赤線のエリア(木の切削に直接機能する部分。)は直線部分で研いでいました。
 また、10度下げてのねじれも見られなかったので、丸ヤスリで研ぐ時も、上刃の傾きと平行に研ぐのが正解だと思います。
<25AP>
 
<91VXL>
 まだ使ってみないけど、カッティングポイントが甘いのでVXの方が良さそうです。
<91VX>
 やはりこれが一番食い込みが良さそうです。
 3種類比べてみても、30度と言うのもアバウトなようですね!(笑


 ※ 使ってみたら、VXLの方が良く切れたし 木口もきれいでした。
<25AP>
 25APは、元が幅広でぶれが少ないから安定しているのかとも思ってしまうのですが...
<91VXL>
 どの刃を見ても、上刃は平ヤスリですね!
その方が、角度も決めやすいし、切れ味も落ちにくいと思います。
 どうして丸ヤスリで研ぐのが普通になってしまったんでしょうね?
<91VX>
 刃の種類によって切削角が違うので、写真の撮影位置によるのかなと思ったのですが、他の刃も見比べたら結構ばらついていました。意外とそんなもんかもしれません。




基本から見直してみよう(ソーチェーンの形)

 どうもしっくり来ないので、原点に戻って考えてみます。

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